はじめに
テレワークの普及や働き方の多様化によって、「地方移住」が現実的な選択肢として注目されています。
特に長野県は、豊かな自然環境と暮らしやすさから人気の移住先のひとつです。
本記事では、東京と長野の「可処分所得」と「可処分時間」に注目し、実際にどちらが豊かに暮らせるのかをデータで比較してみます。
「経済的豊かさ」でみる長野と東京
可処分所得の比較:東京と長野
まずは世帯の収入から生活コストを引いた「可処分所得」を比較します(総務省データを参考)。
二人以上世帯の可処分所得
- 東京:491,000円(全国1位)
- 長野:450,000円(全国9位)

たしかに、数字だけ見れば東京が月4万円ほど多く、稼げる街であることは間違いありません。
では実際に生活費を差し引いたらどうなるでしょうか。
生活コストの違い
日々の出費を比較すると、長野のほうが負担が軽いことが見えてきます。
- 食費
- 東京:85,000円
- 長野:79,000円
- 光熱費
- 東京:20,000円
- 長野:20,000円
- 平均家賃
- 東京:114,000円
- 長野:64,000円

家賃以外は大きな差がないですね
特に大きな差となるのが「家賃」です。東京では10万円超が当たり前ですが、長野では6万円台が中心。
東京では長野の約1.8倍もかかり、家計を圧迫しています。

住居費の差が生活のゆとりを大きく左右していることが分かります。
実質可処分所得+通勤コストを考慮すると?
可処分所得から食費・光熱費・家賃を差し引いた「実質可処分所得」を計算すると以下の通りです。
計算式:
「実質可処分所得」:可処分所得-食費-光熱費-家賃
- 東京:491,000 - 85,000 - 20,000 - 114,000 = 278,000円
- 長野:450,000 - 79,000 - 20,000 - 64,000 = 291,000円
- 東京:約278,000円
- 長野:約291,000円
一見するとあまり変わりませんが、
ここに「通勤時間の機会費用損失」を加えると差が広がります。

首都圏の平均の通勤時間は約90分というデータがあり、通勤時間が長いほど労働時間の損失をしていると考えることができます。
そして、首都圏がこの通勤時間の機会費用の上位を独占しています。
- 通勤の機会費用損失(時間をお金に換算)
- 東京:58,000円
- 長野:21,000円

長野の平均通勤時間は30分程度の計算ですね。
首都圏では長時間通勤が当たり前となっており、時間をお金に換算すると東京では月5.8万円の損失が発生するとされています。
一方、長野県は車通勤中心で、損失額は月2.1万円程度にとどまります。

これを考慮すると、最終的な“実質可処分所得(通勤コスト込み)”は以下のようになります。
計算式:
“実質可処分所得(通勤コスト込み)”=実質可処分所得-通勤の機会費用損失
- 東京:278,000 - 58,000 = 220,000円
- 長野:291,000 - 21,000 = 270,000円
- 東京:約220,000円
- 長野:約270,000円
最終的に、長野は東京より月に約50,000円も多く“実質的に自由に使える価値”を持っているという結果になりました。
東京の「平均値」に潜む落とし穴
ここで注意が必要なのは、東京の「可処分所得 491,000円」という数値には、高収入層も含まれている点です。
大手企業や外資系で働く一部の人たちが平均を押し上げており、一般的な会社員や子育て世帯にとっては、実際の手取り感覚はもっと低いのが実情です。

つまり、東京で高収入を得られる人は確かに存在しますが、
多くの家庭では「高い家賃・生活コスト・通勤ストレス」によって可処分所得が圧迫され、豊かさを実感しにくいのです。

東京に住みたいのであれば、平均年収が1000万以上の大企業に就職しましょう。
長野移住がもたらす「豊かさ」

一方の長野県は、収入面では東京にやや劣るものの、
- 低い家賃と生活コスト
- 短い通勤時間(車通勤中心)
- 自然に囲まれた環境による健康的な暮らし
といった要素によって、実質的に自由に使えるお金と時間が多いのが魅力です。
「お金と時間の両方を確保できる暮らし」こそ、これからの時代における真の豊かさだといえるでしょう。
まとめ
東京と長野の二人以上世帯における実質的な可処分所得を比較してきました。
項目 | 東京 | 長野 |
---|---|---|
可処分所得 | 490,000円 | 450,000円 |
実質可処分所得 (生活コスト控除後) | 271,000円 | 288,000円 |
通勤時間の機会費用損失 | 58,000円 | 21,000円 |
経済的豊かさ(最終値) | 22,0000円 | 27,0000円 |
東京は「稼げる街」であることは確かですが、その恩恵を受けられるのは一部の人に限られます。
多くの家庭にとっては、生活コストや通勤の負担が大きく、手元に残る豊かさは想像以上に小さいのです。
長野県は収入面で劣るように見えても、生活費の安さと可処分時間の多さによって、経済的にも精神的にも豊かな暮らしを実現できます。
これからの「地方移住の時代」には、単純な収入額ではなく、実質的に自由に使えるお金と時間で暮らしを評価する視点が欠かせないかもしれません。